フィルムコミッションにおける行政の役割

中澤 匠

はじめに

フィルムコミッション(FC)とは

 映画やテレビドラマ、CM、写真などのロケーション撮影(以下ロケ撮影)を地元に誘致し、支援活動をする非営利団体のこと。ロケ撮影を望む国内外の製作会社・団体の相談窓口になり、ワンストップサービスを提供する。

     ワンストップサービス=許認可関係や情報提供、調整などを複数の窓口で行なうのではなく、そこに行けばすべての手続きがすむサービスのこと。

 

問題提起

1、FCの活動は地元にとって公共性がある活動なのか。それとも映画関係者や映画好きの自己満足なのか。

 日本でFCが誕生し始めたのは2000年になってからだ。現在全国の都市で設立され始めている。その過程で行政の積極的な協力が得られると、公共施設の撮影許可の下りやすさ、住民への説得など活動のやり易さが格段に良くなる。よってFCにとっては行政との関係は切り離しては考えにくい。行政の協力、さらに市民の理解を得るためにFCの活動における公共性の是非が問われる。

 なぜ公共性が明確に見えないかというとそれはFCの掲げるメリットが経済効果においては長期的な考え方であり、また文化的な向上や地域への愛着心に主眼が置かれているからである。「映画は文化」と考えているといわれるアメリカと、映画は「娯楽」「金儲け」と考える日本との違いの中でFCの掲げるメリットは本当にメリットと考えられ、受け入れられるのか。

 

 といっても現在立ち上がっているFCには行政が中心となっているものが多い。そのような行政はどのようにFC設立へと動いたのか。今後は行政側の考えを中心に調べて行きたい。

 

資料

日本でのFCの現状

 横浜市、大阪、神戸市、北九州市、北海道などで設立ないし設立に向けた動き。各FCの主体〜

 横浜市〜行政(観光・コンベンション部門)

 大阪〜商工会議所主体、USJとの関係

 神戸市〜行政(広報部門)、震災からの復興

 北九州市〜行政(産業立地部門)シティセールス、都市のイメージの改善

 北海道〜道庁が来年設立に向けて動く(1999年時点)

 東京都では、石原知事の肝いりで「東京ロケーションボックス」設立

 〜公的施設の貸し出しだけ、道路撮影許可などはやらない(FCとは違う)

横浜フィルムコミッションのこれまで

特徴

1、市長からのトップダウンで話が早かったー平成1210月から正式に活動。

2、立ち上げ〜 横浜市・経済局 観光コンベンション課

3、事業主体〜 (財)横浜観光コンベンション・ビューロー

4、実績多い〜 これまで316件のロケに対応、うち2本の連続ドラマを含む

映画

     サトラレ(ROBOT

     冷静と情熱のあいだ(シネバザール)

テレビドラマ

     ラブコンプレックス

     カバチタレ

     女子アナ。                              など

5、行政の範囲?という疑問、トップダウンだからスムーズに出来た

6、実現には庁内のPRがポイント

7、窓口の一本化までは出来ていない(窓口の紹介だけでも製作者にメリット)

8、製作者はマイナス・イメージが欲しいこともある。

     横浜市にとってということか?

秋田フィルムコミッション研究会 http://www.m-cross.co.jp/afc/

 

「フィルムコミッション全国シンポジウムin信州上田」

2001119日(金)午後1時から午後5時まで

パネルディスカッションは日本版FCの必要性や課題、日本映画界の現状について討論した。

村川透氏(映画監督)

・体験を交え映画業界からの要望

「海外では届け出ればフランスでは道を止めてくれるし、ロサンゼルスやニューヨークでは警察は仕事として協力してくれる。フィルム・フレンドリーな意識がある。日本ではフレンドリーな場所もあるが、剣もほろろな場所もある。自治体によって差がある。もっと

大きな気持ちでやって頂きたい。ノーから始まってはいけない。」

 

前澤てつじ氏(全国FC連絡協議会副会長)

・観光振興にFC頼みにくぎ

・市民と一体になった有機的な取り組みの必要性を強調

「観光振興ということで、観光名所を撮って欲しいと要望することは間違い。FC5年、10年やってはじめて経済効果が生まれてくる話」

「自治体がFCを役所の感覚でやると失敗する。行政にはフレキシブルな対応こそが求められている。そのためには市民を巻き込まなければいけない」

 

古河学氏(日本観光協会調査企画部長)

「松江市美術館の閉館時間は『日没プラス30分』となっており、そこから見える夕日がいかにきれいかを知った上で対応している。こういう発想が行政に求められている」

「観光振興とごっちゃになると、観光客を呼ぶためのもの、PR効果が高いもの(に協力する)という発想になる。これからの観光は『さりげない風景』を求める方向に変わってきている」

 

永井正夫氏(上田市出身の映画プロデューサー)

・茨城県のある町での雨降らし(消火栓などから水を引き雨のシーンをつくること)のシーンで、人手が足りず、行政がほかの市町村から応援を仰いだ例を挙げて

「撮影はその町一ヶ所では撮りきれない状態がある。広い連携が必要。」

 

境真良氏(経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課長補佐)

・製作の応援だけでなく、上映までも含めた地域と映像業界との新しい結びつきが必要だと提案した。

新潟FC研究会 http://www.ne.jp/asahi/niigata/eigajyuku/FC/

 

参考

 1989年公開「ブラックレイン」の撮影が関西で行なわれた。撮影隊は日本川からのロケ協力があるとの情報を得て、来日したのだが、いざ来てみると道路使用も建物撮影もままならず、途中でロケ隊を引き上げてしまった。この話がアメリカ中に広まり、以後10年間ハリウッドの日本ロケは行なわれていないのである。これはFCも引き受け体制も、ルールが全くなかったために起きたことだ。現在、対策映画の投資に対しては映画が完成しなかったときのために保険がかけられているが、FCがない地域での撮影がある場合、その保険額は十数倍にもなる。FCなしにロケ誘致は考えることが出来なくなっているのである。

http://www.infosnow.ne.jp/~kino/hold/fc.html